コミュニケーション・ラボ「i」
《話題の転換の仕方、見つけ方》
ここまで、緊張する原因とその解決策について紹介しました。しかし、緊張に伴って話す話題がなくなり、沈黙が気まずいと感じたことはありませんか?
そんなとき、うまく話題を見つけて次の話題につなげることができれば、会話はよりスムーズになります。
そこでこれから、話題の転換の仕方、話題の見つけ方についてご紹介します!まずは前提として、話題の転換について見ていきましょう!
〇早わかりまとめ
《話題の転換》
3つのタイプ:進出型・再開型・前提提示型
《解決策》
1. 相手を観察する
2. 自分の話をする
3. キーワードの活用
《ユーモアの活用》
聴き手が思わず突っ込みたくなる方法!?
【話題の転換】
私たちが、日常会話において行なっている話題転換は、主に新出型、再開型、前提提示型の3つのタイプに分けられます(花村 博司, 2015)。
・新出型
→それまで話していた話題とは全く別の新しい話題を出すとき
例えば、「そういえば、昨日バイトでこんなことがあって〜」や、自分たちの周りで気になったものや出来事について、「あれってさ、〜なのかな?」などと話題を転換するときです。
・再開型
→それまでに話していた話題を再び出すとき
例えば、「それでさ、さっきの〜って...なの?」や「でもさっきの話さ、やっぱり〜かもしれないね!」などです
・前提提示型
→会話の始めの部分では、新しい話題のように思えても、話が進むと今までの話題とつながっているとき
(これはあまり使われることが無いので、ここでは深くは取り扱いません。)
ここまで、話題転換の3つのタイプについて述べてきましたが、実際の会話のシチュエーションでどのように活用すればよいのでしょうか?
ここでは、3つの解決策をご紹介します!
【会話を続かせるための解決策】
解決策1 : 相手を観察する
会話の話題に困ってしまったら、まずは相手のことを観察してみましょう。
どこかいつもと違うところはありませんか?
本人に伝えたくなるような、ステキなところはありませんか?
とあるアンケート調査によると、友人との会話の中で特に若い女性は<自分や相手の服装・衣装>について、半数以上の人が進んで話題にし、話題にしたくないという人はほとんどいませんでした。
それを話題にしたいという人は、褒めたり興味や注目を示したりすることによって相手と打ち解ける狙いがあるそうです(熊谷智子 石井恵理子,2005)。
その一方で、相手の見た目を話題にすることには注意も必要です。
先ほどの調査では、<身長・体重などの体のサイズ>について、男女を問わず、進んで話題にしたいという人はほとんどいませんでした(同上)。
自分は褒めたつもりでも、面白くいじっているつもりでも、相手がそれをコンプレックスに思っていたとしたら、相手を傷つけることになってしまいます。
相手を観察した上で、自分も相手も気持ちよくおしゃべりが出来るような会話を始められるといいですね!
この解決策1は、先ほど紹介した3つのタイプのうち、新しい話題を出す新出型に当てはまります!
解決策2 : 自分の話をする
話題例1 : 過去の思い出、出来事について話す
「思い出コミュニケーション」という言葉を聞いたことはありますか?(山下 清美、野島 久雄, 2001)
これは、自分の思い出を人に伝えることが、人々にとっての新たな価値を創造することであり、また、新しいコミュニケーション関係をつくるきっかけになるというものです。
つまり、自分の思い出や出来事について話すと、相手にとっての新たな価値となるため、相手に興味を持ってもらいやすくなります!
私たちの身近な場面においては、自分のスマートフォンの写真のアルバムを整理して、見やすくしておくことで、会話中に写真を探す時間が短縮でき、会話をスムーズに進めることができるのでオススメです!
話題例 2 : 自分の鉄板ネタを持つ
あなたは、絶対に話が盛り上がる自分だけの「鉄板ネタ」を持っていますか?
過去の笑える失敗談や最近おもしろかった出来事、地元の独特な方言などは、話の鉄板になりやすいと思います。他の友人に話したときに盛り上がった話題を覚えておくと、いつでも話せる「鉄板ネタ」のストックが増えていきますよ。
この解決策2は、話題がなくなったときに、新しい話題として自分について話す新出型と、一度出た話題について、さらに自分のことを話して会話を続ける再開型の両方に当てはまります!!
解決策3 : キーワードの活用
話題がない原因としてよくあるのが、相手との共通点が見つからないということです。そんなときのために、誰とでも話せる一般的な内容のキーワードを覚えておくと良いです。
そのキーワードは…
「ト・リ・コ・で・す・よ」です!
「ト」:特技・趣味
「リ」:流行
「コ」:好物
「で」:出来事
「す」:スポーツ
「よ」:予定
あなたがたくさんの話題を提供することができれば、相手はあなたの虜(トリコ)になってしまうでしょう!
(例)
・特技:モノマネ→やって見せる
・趣味:映画鑑賞、スポーツ→「もうすぐアラジン始まるよね!気になってる映画、他にもあったりする?」
・流行:タピオカ、トレンドの服、→「昨日タピオカ飲むために2時間並んだの」
・好物:スイーツ、ラーメン、→「ここのケーキ美味しいんだけど知ってる?」
・最近の出来事:旅行、アルバイト、サークル(部活)、→「大阪行って、~食べたよ!」
・スポーツ:サッカー、野球、バスケ→「昨日のサッカーの試合見た?」
・今後の予定:旅行、インターン、試験→「今週末東京行くんだけどおすすめの場所ある?」
この解決策3は、相手との会話が終わってしまって、次の話題が見つからないときに、新出型として新たな話題を話す場合に当てはまります!
※注意点
適切な話題がある一方で、避けるべき話題もあります。
先ほど述べた<身長・体重などの体のサイズ>の他に<自分や家族の収入>、<宗教・信仰>などは友人との会話で話題にしたくないと考える人が多いようです。
このような相手のプライバシーに関わることや意見対立のもとになるような話題は、友人との楽しい会話の中では避けた方がよいでしょう(熊谷智子 石井恵理子,2005)。
【ユーモアの活用】
会話を続かせるための解決策では、どうしたら話題を見つけられるのかを紹介してきました。紹介した解決策だけでも十分に会話をスムーズに進められると思います。しかし、もしそこに笑いを加えることができたならば、最高だとは思いませんか?
日本では、会話展開が常識から外れたり、予想外の方向へ繰り広げられたりすることが面白いと感じられます。(大島希巳江, 2005)
いわゆる聞き手がツッコミをしてしまいたくなるような話をすることで、ユーモアを感じ取り、連帯感が生まれるのです。
・理論も気になる人は…
実はこのことを説明する理論も存在しているので、少し紹介したいと思います。ユーモアに関しての理論に「不調和理論」があります。どのような時にユーモアが成り立つのかを説明する理論です。
この「不調和」とは、
☆全く異なるように思われる概念が結びつくこと
☆自分が想像、予想できることから実際の出来事がはずれる(逸脱する)こと
このテーマの冒頭部分にも書いてありましたね。
ここで、ユーモアが無いと悩む方もいるかと思います。しかし、ある研究で「ユーモア・スキル」尺度が「コミュニケーション・スキル」に負の影響を及ぼす危険性は少ないことが示唆されています。(矢島・大崎, 2015)ですので、この研究結果に基づいた場合、ユーモアが無いからと無理に悩む必要はないと言えます。
・危険性
「ユーモア」は使い方によってはマイナスに働くこともあります。使用するタイミングや状況を考えず、むやみに笑わせようとすると逆効果になる場合もあるため、注意が必要です。場を盛り上げる、和ませるなどプラスに働く使い方をするために、「どのような使い方をするか」を考え、「状況」と「タイミング」を判断しながらユーモアを活用してみましょう!
【ユーモアの活用例】
それを踏まえた上で、私たちが実際に話したことのある活用例を見ていきましょう。
・思い出コミュニケーション
(スマホの面白い写真を見せながら)これ○○行った時の写真なんだけどさ…
・鉄板ネタ
今日けった(自転車)で学校来たんだけどね…
・趣味/特技
最近フルーツ磨くのにハマってるの
・流行
先週初めて某タピオカ店行ったら、なんか私のだけ氷入ってなくて生温かかったんだよね
・好物
これめっちゃ好きな駄菓子なんだけど1個食べてみる?
めっちゃ体に悪い味するよ
・出来事
昨日さ、知らないおばあちゃんに年齢20上にみられた…
・スポーツ
昔クラスで1番強い奴は誰だってなって、みんなで腕相撲大会したらさ…
・予定
そう言えば明日、朝5時半出社なんだ~
話題は、1度話したらもう使えないというような使い捨てのものではなく、相手と楽しく会話できたなと感じるものは、何度でも再利用可能です。また、実体験を基にした話題であれば話しやすいので、どんどん色々なことに挑戦して、あなたにしか話せない話題も見つけていきましょう!
【まとめ】
会話中に話題が見つからずに困った時には…
・相手を観察する
・自分の話をする
・話題のキーワードを活用する
+
・ユーモアを活用する(余裕がある人は)
これらを状況や内容を判断しながら使ってみてください!
<参考文献>
大島希巳江. (2005). 高コンテキスト社会と低コンテキスト社会のコミュニケーションにおけるユーモア. 笑い学研究, 12, 29-39.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/warai/12/0/12_KJ00003258930/_pdf
熊谷智子, & 石井恵理子. (2005). 会話における話題の選択: 若年層を中心とする日本人と韓国人への調査から. 社会言語科学, 8(1), 93-105.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jajls/8/1/8_KJ00008440093/_pdf/-char/ja
笹川洋子. (2009). 日本人女性の会話に見られる話題転換の構造について. 神戸親和女子大学大学院研究紀要, 5, 15-24.
野村亮太, & 丸野俊一. (2008). ユーモア生成理論の展望. 心理学評論, 51(4), 500-525.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sjpr/51/4/51_500/_pdf/-char/ja
花村博司. (2014). 日本語の雑談会話における話題転換研究の方法: 話題転換はどこで行われ, どう分類されるか.
http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/bitstream/10466/14279/1/2014000149.pdf
花村博司. (2015). 日本語の会話における話題転換表現: 新出型・再開型・前提提示型という話題転換の型による使いわけ. 社会言語科学, 18(1), 75-92.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jajls/18/1/18_KJ00010198428/_pdf
矢島伸男, & 大﨑素史. (2015). 笑いとコミュニケーション能力との関係牲について: 芸能従事者と大学生を対象とした 「ユーモア・スキル」 調査を中心に. 教育学論集, (66), 71-91.
山下清美, & 野島久雄. (2002). 思い出コミュニケーションのための電子ミニアルバムの提案. ヒューマンインタフェースシンポジウム, 1, p261-264.
http://www.isc.senshu-u.ac.jp/~thn0438/files/his-ppm-2001pdf.pdf
楊虹. (2005). 日本語母語場面の会話に見られる話題開始表現. 人間文化論叢, 8, 327-336.