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話し方

 

〇早わかりまとめ

《解決策》

1. 会話を盛り上げるためのワザ

①新情報の提供

②まっすぐコミュニケーション

2. テンポ

①相手のテンポに合わせる

②テンポの作り方

自己開示の活用

会話を盛り上げるためには、お互いに自分のことを話す必要があります。

自分の話をすることをコミュニケーション学では自己開示と呼んでいます。

 

自己開示とは?

「自己開示とは、自己を他者に知ってもらうために自分のことを伝えること」

ではなぜ、自己開示が会話を盛り上げるのに重要なのでしょう?

 

自己開示の返報性 (V.J ダーレガ、S.メッツ、S.ペトロニオ、S.T.マーグリス,1999)

自己開示の返報性とは、自己開示をした相手に対して、相手も同じように自己開示するという性質のことです。実は、この返報性が盛り上がる会話のカギなのです!

 

→「相手から自己開示を受けたということは自分が信頼されている証拠であるとみなされやすく、その結果相手に対する好意が生じ、相手の信頼に応えるべく同じように自分も自己開示しようとする」(V.J ダーレガ、S.メッツ、S.ペトロニオ、S.T.マーグリス,1999)

 

つまり、適切な自己開示は相手からの好意を高め、さらに相手の自己開示を促すのです!

実際に、ホテルスタッフとして働くSさんも返報性の理論を意識しているようです。

「相手から言葉を受け取ったら、自分も同じくらいの量の言葉を投げ返すようにしています。(Sさん・サービス)」

では、この自己開示を意識して 会話を盛り上げるためのワザを2つ練習していきましょう!

 

解決策1: 会話を盛り上げるためのワザ

 

①新情報の提供

あなた自身の知識や経験から、相手がまだ知らない新情報を話しましょう。

新しい情報がでると会話にお得感が増し、満足度が高まります。

 

「会話を続けさせるための解決策」の解決策3で、話しやすい話題のキーワードが挙げられています。

その話題のなかから1つ選び、“わたしの新情報”を話す練習をしてみましょう。

 

例:「趣味・特技」

わたしカフェ巡りが趣味なんだけど、この間みつけたところのプリンがすごくおいしかった!

例:「出来事」

きょう〇棟の学食でお昼ご飯食べたんだけど、すごく空いてておすすめだよ~

 

実際にプロの美容師さんも、お客さんと楽しく話をするために情報収集には気を付けているようです。特に話題のヒントになるトピックについて、アンテナを高くしておくといいでしょう。

 

「ファッションやヘアスタイルなど、様々な人に対応できるよう常にトレンドなど幅広いジャンルの知識を持っているようにしています。(Tさん・美容師)」

 

 

とはいえ、役立つ情報を提供するのは簡単なことではありません。

そこで二つ目のワザ、まっすぐコミュニケーションです!

 

 

② まっすぐコミュニケーション

まっすぐコミュニケーションとは相手の発言に対して、自分の考え方や感情を正直に相手に返す方法です。相手に過剰な気遣いをせず、自由に自己開示をしましょう。

 

話を盛り上げる時には、相手の話をしっかりと聞き、ある程度相手の話に合わせてあげることが必要です(「聞き方」の説明に詳しく書いてあります)。

しかし、相手の話を聞いているだけでは、聞いているこちら側は疲れてしまうこともあります。

ThibautとKelley (1959)は、彼らが提唱したSocial Exchange Theoryの中で、

「人が他者との関係性に満足するためにはBenefit(メリット)を感じる必要がある」と説明しています。

しっかり相手の話を聴くことよりも、自分がその会話を楽しんでいるという気持ちが上回っていないと、その会話に魅力を感じなくなってしまうと考えられます。

 

これに関連し、Swann (2012)も、彼の提唱したSelf-Verification Theoryの中で、

「自分というものを正しく他者に理解されるということは、その他者との関係性への大きな満足感につながる」ということを説明しています。

人に合わせるだけでなく、自分の気持ちを相手に伝える(本当の気持ちを分かってもらう)ことは、その会話を楽しむためには重要な要素だということです。

 

おうむ返しや肯定は、相手を気遣った方法ですが、自己開示ではある程度自分勝手に話をすることが効果的です。相手に気を遣い、好かれなきゃ!と考えすぎると疲れてしまいます。自分も相手との会話を楽しむことが大切です。

では、具体的にどのようにしたらいいのでしょう?次のAさんとBさんの会話を例にみてみましょう。

 

例:A「きのうタピオカ飲むために4時間並んだの」

    Bの本心(タピオカに4時間…!? 絶対いやだよ...)

この場合、まっすぐコミュニケーションを使ったBさんはどう応えるでしょう。

 

(ア)気が合わないと思われたくないので、本当は思っていないが「いいなあ、私も行きたい!」と言う。

(イ)Aさんを不快にさせないように、明るく「私はタピオカに4時間は待てないなあ」と言う。

 

こたえは(イ)です。

(ア)では、自分の考えをまげて相手に合わせていますが、それが続くとBさんはAさんとのおしゃべりに疲れてしまうでしょう。(イ)のように自由に考えを伝えることで、自分もその会話を楽しむことを意識することが長続きする会話のコツです。

 

さて、ここまで自己開示を使った会話を盛り上げる話し方のワザをご紹介しました。

 

自己開示はまだあまり関係の深くない人と親密になるために有効な手段です。しかし不適切な自己開示は、関係が深まるのを抑制することがあります。 (諸富祥彦,2014)

 

例えば、自己開示の量や深さが適切でない場合です。

自己開示が多すぎると相手に負担を感じさせたり、「自分の話ばかりする人だ」という印象を持たれてしまうでしょう。また少なすぎても信頼関係を築くことができません。自己開示は相手と同程度にすることを心がけましょう。

 

☆アイメッセージ

話し方のテクニックとしてアイメッセージというものがあります。

主語を「あなた」ではなく「わたし」にすることで自分の思いを気持ちよく相手に伝える方法です。

 

先ほどのAさんとBさんの例で考えてみましょう。

 

A「きのうタピオカ飲むために4時間並んだの」

こう言ったAさんに対し、Bさんが、

B「よく4時間も並べるね」と応えたとしましょう。

 

この場合、隠れた主語は「(あなた)よく4時間も並べるね」であり、批判的に聞こえます。

しかし、アイメッセージを使って、

B「わたしは4時間も待てないなあ」と言うと、自分の思いはきちんと伝えながら相手をけなすような響きもありません。

 

話し方の2つのワザとアイメッセージを組み合わせて使うことで、より気持ちよく自分の考えを相手に伝えることができるでしょう!

解決策1では、相手がまだ知らない新情報を話すこと、相手の話を聞くだけではなく、自分の気持ちを伝えることで自分も会話を楽しむことができることがわかりました。

 

解決策2: テンポ

① 相手のテンポに合わせる (岩壁茂,2018)

みなさんは会話する時、テンポを気にしたことがありますか?

 

人にはそれぞれ心地いいと感じるテンポがあり、テンポの合う人同士のほうがよりリラックスして会話を楽しむことができるのです。

 

「相手のノリに合わせ、テンポを意識してキャッチボールを楽しんでいます。(Sさん・サービス)」

 

② テンポの作り方

それでは、実際どのようにテンポを調整すればよいのでしょうか。

 

・テンポを早くする場合:おうむ返しや「えっ」「おお~」といったクイックリアクションが効果的です。

・遅くしたい場合:静かに頷きながら聞く、ゆっくり話すというように、相手をあせらせない反応が重要です。

 

会話をする上でテンポを気にすることは今まであまりなかったかもしれませんが、これからは相手に合ったテンポで話すことでよりリラックスして会話を楽しめるでしょう。
 

<参考文献>

 

Miller, R. (2018) ”Intimate Relationships Eighth Edition,” 351, 425, 151-156.

 

榎本博明 (2009)『自己開示の心理学的研究』北大路書房.

 

岩壁茂 (2018)『カウンセリングテクニック入門 プロカウンセラーの技法30』金剛出版.

 

諸富祥彦 (2014) 『新しいカウンセリングの技法 -カウンセリングのプロセスと具体的な進め方』誠信書房.

 

ロバート・ボルトン、米谷敬一・訳 (2010)『ピープル・スキル-人と”うまくやる”3つの技術-』宝島社.

 

佐藤綾子 (2015)『カウンセラーのためのパフォーマンス学 -信頼を確立する基本スキル』金子書房.

 

V.J ダーレガ、S.メッツ、S.ペトロニオ、S.T.マーグリス、 豊田ゆかり・訳 (1999)『人が心を開くとき、閉ざすとき』金子書房.

 

Swann, W. B., Jr. (2012). Self-verification theory. In P. A. M. Van Lange, A. W. Kruglanski, & E. T. Higgins (Eds.), Handbook of theories of social psychology (pp. 23-42). Thousand Oaks, CA, : Sage Publications Ltd.

 

Thibaut, N.; Kelley, H. (1959). The social psychology of groups. New York Wiley.

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