コミュニケーション・ラボ「i」
【聞き方】
傾聴の活用
傾聴とは、耳から自然に入ってくる音を「聞く」こととは異なり、積極的に相手の話を「聴く」ことです。傾聴は、言葉だけではなく、相手の話している時の感情や表情、言葉以外のメッセージを捉えることも大切です。それを的確に捉えて反応することで、相手に関心を持っていることを伝えることに繋がります。相手がもっと積極的に話せるようにすることで、会話をさらに盛り上げることができます。(水國昭充、青木智子、木附千晶,2018)
例えば、
「生徒の表情・声のトーン・しぐさを観察しながら会話を進め、相手が興味を持っている話題だなと感じたとき、その話題に対して深化させています。」 (小学校の先生より)
ここでは以下の解決策を提案します!
〇早わかりまとめ
《解決策》
①話題を広げる
②相槌の打ち方
③応答
④受容と共感
①話題を広げる
話の内容によっては、共感することが難しいこともありますよね。そのような場合は、話し手の内容に興味を持ってみる、そしてその話題を掘り下げることによって話を広げてみると良いでしょう。
例えば、
相手:「私◯◯◯のバンドが好きなの」
という話題になり、あなたがそのバンドを知らなかった場合、あなたはどのような返答をしますか?
◯なぜそのバンドを好きになったのか?
◯よくライブに行くのか?
◯いつから好きなのか?
◯オススメの曲は?
と色々な角度から話を聞いてみましょう。
また、「あまり知らないけど、どんなバンドなのか気になる!」など、最初に興味があることを示してから話すことで、話を聞き入れる姿勢を示すことができます。
このように話し手を受け入れることで、相手の「自己重要感」を高めることができます。相手の思いは正しいという意向を示す聞き方を目指しましょう。相手が自信を持って話せるようになれば、さらに相手から話を引き出すことができます。(諸富祥彦,2010)
しかし...
聞き手が感情移入しすぎると、相手との相違点がどんどん気になってしまい、おせっかいなアドバイスをしてしまうこともあります。
そこで...
話し手は聞き手とは違うということを念頭に置き、客観的に話を聞くようにしましょう。
☆聞き上手になれば、たくさんの人から話をされるようになり、新しい情報などが周りからどんどん集まるようになります。幅広い情報を知っていると、自己開示だけでなく、相手の話への質問にも使えるようになります。
②相槌の打ち方
おそらくほとんどの人は、意識せずに相手の話に合わせて「へぇ」「うん」などの相槌を打っているでしょう。また、それに合わせて無意識にうなずいたり、表情を変化させたりしています。この相槌に少し工夫を加えると、さらに相手の話を促進させることができます。(水國昭充、青木智子、木附千晶,2018)
【バリエーションを増やす】
「うんうん」「へぇ」「ほぉ?」「そうなんだ!」など、相手の話題に沿って変化させることで、相手に話しやすい印象を与えます。
【抑揚をつける】
同じ「へぇ」でも、低いトーン、高いトーン、語尾を上げて疑問のよう使う、など様々な表現方法があります。インパクトを変化させることで、相手の話を促進させることができます。
【テンポやリズムに合わせる】
話の流れに沿わない相槌はかえって逆効果です。相手が話の波に乗りやすいような相槌を心がけましょう。言葉だけでなく、適度に頷いたり、顔や体を使って表現するのも効果的です。
例: 「私、実はアイドルが好きでね」
「うんうん」
「来月ライブがあって東京まで行くの」
「へー!すごい!」
「それでね、……」
「声のトーンや抑揚を意識しながら返答することを心がけています。眉毛を動かすくらい、リアクションを大きくしています。(ホテル ラウンジスタッフ)」
③応答
相槌だけでなく、いくつかの応答を加えることで、相手に聴いていることをより明確に伝えることができるようになります。
【簡単な応答:オウム返し】
応答する際に、相手の感情を表す言葉をとらえて、そのまま相手に返します。
多用しすぎると、かえって話を聴いていないように感じられてしまうので注意が必要です。
例:「私、スイーツが好きでね。昨日早起きして人気のケーキ屋さんに行ったの。でも私の前の人で売り切れちゃって、悔しかったんだよね」
「それは悔しいね」
【言い換える応答】
相手の感情やキーワードを違う言葉に言い換えて伝える方法です。
適度に使用することが大切です。
例:「私、スイーツが好きでね。昨日早起きして人気のケーキ屋さんに行ったの。でも私の前の人で売り切れて、悔しかったんだよね」
「スイーツが好きなんだ!並んだのにそれは辛かったね...」
【まとめる応答】
さらに応答を確かなものにするために、相手の言ったことを要約、言い換えをして返す方法です。
話題の要点を的確に捉えて要約するので、しっかり聴いていなければなりません。話題が多い場合は「つまり…ということ」というように話の内容を確認するときにも使えます。
例:「私、スイーツが好きでね。昨日早起きして人気のケーキ屋さんに行ったの。でも私の前の人で売り切れちゃって、悔かかったんだよね」
「せっかく朝頑張ったのに買えなかったのかー。それは辛いね。」
④受容と共感
受容とは、相手の存在を受け止めることであり、共感とは、相手の感情を共有することです。
例えば、自己開示で「食べ物の好き嫌いが多くて」という体験を辛そうに話す人もいれば、笑い話として話す人もいます。聴き手と話し手の間にどの程度信頼関係が成立しているかによって、聞き手は適切な対応をする必要があります。相手の話を笑い話だと勘違いして大笑いしてしまったら、相手が腹を立てる可能性もあります。
このように、関係性や状況によって、態度は大きく変化します。自分の価値観や考えはひとまず置いておき、相手の生き方、言動、価値観、考え方を受け止めようとする姿勢が大切です。話を否定したり、話題を奪ったり、話の腰を折るようなことはしないように気を付けましょう。
それが難しいと感じたときは…
受容が難しいとき:「受容と許容は違う」ということを念頭に置きながら話を聴きましょう。価値観が合わなかった場合も、まずは相手の話を受けとめることが大切です。
共感が難しいとき:相手が置かれている環境や状況など、その背景に注目して見てください。背景を詳しく知ることで、自分の経験と重なる部分を発見したり、相手の困難や努力を知り、好感を持ったりすることもあります。(水國昭充、青木智子、木附千晶,2018)
ここでは、
①話を広げる→相手の話に興味を持ち、話を聞き入れる姿勢を示すことで話しやすい環境を作ることができる
②相槌の打ち方→話の話題に沿ってバリエーションを増やすことで相手の話を促進させることができる
③応答→相槌に加えて使うとより相手に聞いている姿勢を示すことができる
④受用と共感→相手の存在を受け止め、相手の感情を共感することが大切である
ということについて話してきました。
<参考文献>
木村周 (2010)『キャリア・コンサルティング 理論と実際』雇用問題研究会.
水國昭充、青木智子、木附千晶 (2018)『楽しく学んで実践できる対人コミュニケーションの心理学』北樹出版.
諸富祥彦 (2010)『はじめてのカウンセリング入門(下巻)―ほんものの傾聴を学ぶ』誠信書房.