コミュニケーション・ラボ「i」
【質問の活用】
〇質問の意義
「質問をする目的の第一番目は、相手にコミュニケーションをとる意思を示す、ことです。相手に関心を持ち、近づきたいという意志を持って質問していくことが相手の話を活性化させます。目的の第二番目は、相手の中からさらに深く思いや考えを引き出すことです。質問することで、相手が心の中でもやもやしていることがまとまったり、気づきが生まれたりすることを促すわけです。」
また、「相手の行動を促すものである」「相手の視野を広げる」「考えを明らかにしたり整理するためのサポートになる」質問は、効果的な質問です。(本山雅英, 2014)
〇早わかりまとめ
《解決策》
①クローズドクエスチョンからオープンクエスチョン
②キーワードから連想ゲームをしてみる
③WHYを効果的に聞く
④過去型質問と未来型質問を効果的に使い分ける
〇質問の仕方
① クローズドクエスチョンからオープンクエスチョン
クローズドクエスチョン
―はい/いいえで答えられる質問
―答えるのが簡単
―尋問されているような印象を持つことも
オープンクエスチョン
―決まった答えがない大きな質問
―心理的負担は大きい
―相手の自由な発話を促す
相手の話を引き出すのが重要→オープンクエスチョンを意識してみましょう。
会話の導入部ではクローズドクエスチョンを用いながら、オープンクエスチョンにシフトしていくようにしてみましょう!
「話しやすい話題から広げていくようにしています。Closed questions →Open questionsを使うと、話を自然に広げていきやすいです。」(Iさん/英語コミュニケーションサポーター)
② キーワードから連想ゲームをしてみる
話を掘り下げるには相手の話のキーワードから質問を考えるといい、と言われていますが、実際に話しながら連想するのは大変ですよね…
そこで! 普段から連想ゲームをしてみるのはいかがでしょうか?
通学中に目に入るものや、周りの人が話していることから、どんどん新しいキーワードを連想する練習をすることで、実際の会話でも自然に連想して話を繋げていくことが出来るようになります!
相手の発言の中にフック(自分が引っかかる部分)を見つけ、その単語を掘り下げるような質問を考えると会話がスムーズにいきやすいですよ!
例「私の趣味は映画鑑賞です。主に洋画のアクションムービーを週に二回ほど見ています。」
このフックから、「5W1H」を意識して質問を考えていくと会話が続きやすくなります。
いつ (WHEN)?
「えっ、いつからよく見るようになったの??」
誰と(WHO)?
「映画は誰とみるの~?」
どこで(WHERE)?
「映画はどこで見てるの??映画館?おうち?」
何を(WHAT)?
「洋画のアクションムービーかあ、例えば何を見たことある??」
どうして(WHY)?
「洋画とか映画鑑賞にハマったきっかけとかあったの??」
どうやって(HOW)?
「洋画ってどうやって見てるの??」
「返答から一つの内容を取り出して、質問するようにしています。」(Mさん/英語コミュニケーションサポーター)
「返答の中からフックを探すようにしています。」(Nさん/英語コミュニケーションサポーター)
「質問するときは5W1Hを意識しています。」(Tさん/サービス)
「相手の服装、持ち物、行動などを見て質問するように心がけています。」(Yさん/ショップ店員)
③ WHYを効果的に聞く
《whyを聞く》
5W1Hを意識して順番に質問すると、面接のようになってしまいます。
「何が好き?」
「いつから始めたの?」
「どこに行くことが多い?」
と言った質問は、一問一答になる可能性が高く、回答が自分の興味のない物であったときに、返答に困ってしまう人も多いと思います。
そこで… whyをメインに質問してみましょう!
「どうしてそうしようと思ったの?」
「何かきっかけがあったの?」
と質問することで、話し手に回想させ、その時の感情を思い出させることができます。
→具体的な話を引き出せ、より深い自己開示をしてもらえる可能性が高まります◎
《「なぜ?」「なんで?」は使わない》
「なぜ」という質問にはどうしても批判的なニュアンスが含まれてしまいます。
また、なぜが多すぎると、「こちらが気に入る答え方」をしようという傾向も生まれます。(本山雅英, 2014)
以下のような質問をすると、相手を問い詰めるようになってしまいますよね。
例「なんで辞めたの?」
「なんでその時言わなかったの?」
「なんで?」と聞くと、理由ではなく、問いただしていると誤解され、相手にとって話しにくい雰囲気を作ってしまいます。
そこで…
「どうして?」「どんな?」に置き換えてみましょう。
例「どうして辞めようと思ったの?」
「どんなところが難しかったの?」
このようにソフトに問いかけることで、相手も話しやすくなります。
④ 過去型質問と未来型質問を効果的に使い分ける
過去型質問:相手の思いを引き出すときや、過去の分析をする時に効果的
未来型質問:相手の求めていることを引き出す場合や新しい行動への意欲を引き出す時に効果的
過去型質問から未来型質問のフローが効果的だと言われています。
例
A「バイト辞めちゃったんだよね~」
B「そうなんだ。どうして辞めようと思ったの?」(=過去型質問)
A「バイト大変でさ。」
B「大変だったんだね… 何がキツかった?」(=傾聴&過去型質問)
A「店長がシフトの鬼で、忙しいのにバイトいれなきゃいけなかったことかな~」
B「そりゃキツいわ。新しいバイト始めるの?」(=未来型質問)
A「う~ん、迷ってる~」
B「まだ迷ってるんだね。次バイト選びするとき何基準で選ぶ?」(=傾聴&未来型質問)
A「時給とシフトの融通が効くことかな!次は失敗したくないし!」
B「確かに!それ大事だわ~」
このように過去型質問で相手の情報を聞き出し、それを傾聴で受け止め、未来型質問をすることで、相手を前向きに話したい気持ちにさせることができます。
ここでは、
①クローズドクエスチョンからオープンクエスチョンにシフトしていく質問をすることによって相手の話を引き出しやすくなる
②5W1Hを効果的に使った連想ゲームを日常生活の中でもやってみる
③whyの質問を「どうして?」「どんな?」に置き換えて聞いてみる
④過去型質問から未来型質問のフローで質問してみる
ことについて話してきました。
<参考文献>
加藤綾子 (2019)『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』文響社.
本山雅英 (2014)『大学生のためのコーチングとファシリテーションの心理学』北大路書房.
斎藤孝 (2016)『すごい「会話力」』講談社現代新書.